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物流コラム

物流業界の現状の課題とは?
各課題のポイントと対策を徹底解説!

物流業界の現状

物流業界は慢性的な人手不足が課題となっていますが、2024年問題により長距離ドライバーの実質的な収入が減り、他業界へ流れてしまうことも懸念され、さらなる人手不足が予想されます。また、トラックドライバーが不足することで輸送の停滞も懸念され、今後、物流に対する消費者の不満を招く可能性があります。

コロナウイルスの発生により、EC市場の需要は急拡大し、物流業界は大きく変化しました。宅配の取扱個数は年々増加しており、国土交通省のデータでは2021年度まで7年連続で取扱数が増加し続けています。また、国土交通省では宅配便の再配達率の削減目標を設定しているものの、目標未達の状況が続いています。再配達はドライバーの配送の手間を増やし業務負担を増大させるとともに、企業にとってもコスト増大に繋がる問題です。
国土交通省:令和3年度 宅配便取扱実績について

宅配の需要が高まり続ける一方で、物流業界では深刻な人手不足をはじめとした諸問題が顕在化しています。
長距離輸送のドライバー確保がこれまで以上に困難になり、輸送費用のコスト増加やサービスの低下といった影響が出てくることが懸念されます。

物流業界で慢性的な課題とされている人材不足やドライバーの高齢化、長時間労働などといった問題が、働き方改革関連法の適用により発生する「2024年問題」によりさらに深刻になるとされており、物流業者と荷主企業が共に対策を講じることが求められています。

物流業界の課題とは?

物流業界が抱える現状の課題のうち、代表的なものは以下の5つです。

1、働き方改革関連法の適用により発生する「2024年問題」
2、人材不足・トラックドライバーの高齢化
3、輸送コストの高騰
4、環境問題
5、災害発生時の物流網停止

各課題の詳細は以下で説明します。

働き方改革関連法の適用により発生する「2024年問題」

2024年問題とは、「働き方改革関連法」の自動車運転業務への適用が2024年4月から開始されることにより発生すると危惧されている課題の総称です。
「働き方改革関連法」のうち改正労働基準法の「時間外労働の上限規制」の猶予期間が設けられていた自動車運転業務について、上限規制が2024年(令和6年)4月1日から適用されました。

この法改正により、ドライバーの時間外労働時間は年間960時間までの上限規制が設けられました。また、2023年施行の法律で60時間超の時間外割増賃金率は25%から50%に引き上げとなっています。また正規・非正規社員の同一労働同一賃金への是正も必須となります。

さらに、労働基準法改定に加えて、厚生労働大臣告示として「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(改善基準告示)が改正され、こちらも2024年4月1日から適用され、トラック運転者(ドライバー)の拘束時間や1日の休息期間等の基準が改定されます。
参照サイト:厚生労働省「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(改善基準告示)」

これらの規制に違反した場合、車両の利用停止や営業停止といった重い処分が適用される、または行政処分の対象となる場合もあるため、これらの規制に対して十分に対策を検討する必要があります。
対策が不十分なままだと、物流に関する業務をこれまで通りに行うことが難しくなる可能性があります。

物流に関する業務をこれまで通りに行うことが難しくなる具体例として、二点紹介します。まず、一点目が、運送会社の売上・利益の減少です。ドライバーの拘束時間が減少することで、1日で運ぶことのできる荷物量が少なくなり、運送会社の売上や利益の減少に繋がります。安易に荷主企業へ運賃の値上げをすれば、価格競争に敗れて顧客が離れてしまい、さらなる売上減少に発展する可能性があります。二点目が、ドライバーの収入減少によるさらなる人手不足です。拘束時間が規制されることで、ほとんどのドライバーの収入が減少することが想定されます。収入減少による離職が発生すれば、さらなる人手不足に陥る可能性があり、企業の存続が危ぶまれます。

国土交通省が、ドライバー不足及び2024年問題の影響を加味し、2030年度までの物流需要ギャップを推定したところ、輸送能力の34.1%が不足する可能性があると発表しています。現在の物流体制を維持させることは難しく、運送コストの増加や輸送力の低下が生じる恐れがあります。

人材不足・トラックドライバーの高齢化

トラックドライバーは、他の業種と比較して低賃金・長時間労働など厳しい労働環境にあり、それがドライバー不足の大きな要因と考えられます。
トラックドライバーの年間労働時間は全産業の平均と比較して長時間にも関わらず、所得額は全産業の平均よりも低くなっています。
古くからトラックドライバーは「危険・汚い・きつい」の3Kと言われていますが、その労働環境で低賃金という実態により慢性的な人員不足に陥っています。
また、このような労働環境のため、他産業と比較して女性の労働者が少ないことも課題です。
さらに、2024年4月から時間外労働の上限規制が自動車運転業務へ適用されることで、長距離ドライバーの実質的な収入が減り、他業界へ流れてしまうことも懸念されます。

日本では少子高齢化が問題視されていますが、物流業界は特にその影響が顕著だと言われています。これには運転免許の取得率の低下、若者の車離れといった問題に加え、運転免許の改正も影響しています。2017年に準中型免許が新設され、トラックに乗るハードルが高くなりました。この改定により、新たに普通免許を取得した人は普通免許では基本的に2トントラックを運転することができないため、追加で準中型免許以上を取得する必要があります。
また、高齢ドライバーの退職により、今後トラックドライバー不足はさらに深刻化すると考えられます。
実際に、トラックドライバーの有効求人倍率は全職業と比較して約2倍となっており、深刻な人手不足の状況が続いています。

輸送コストの高騰

物流業界にとって燃料費は経営に大きく影響します。一部産油国の生産停滞や紛争による供給不安で燃料費は高騰しています。加えて、トラックやトレーラーなどの車両価格、タイヤ代、養生資材などの価格も大幅に高騰。
また、先述の2024年問題による人件費の上昇も相まって、配送料金の値上げをする運送業者が増えていることから輸送コストが高騰する結果となっています。

海上輸送で環境問題改善

世界的に脱炭素社会への転換が急速に進んでおり、商品の生産、輸送、販売、廃棄のサプライチェーン全体での環境負荷の低減は社会的課題とされています。
物流分野においても、効率的で環境負荷の小さい社会の実現のため、物流に関わる関係者が連携して地球環境問題に適切に対応することが求められています。

日本全体における運輸部門のCO2排出量は18.6%で、産業部門に次いで多い状況です。しかしながら、CO2排出量の削減率を部門別で比較すると、CO2の削減率は物流部門が最も低く、環境負荷の低減を実現できていない状況です。
配送先の需要に合わせた「多頻度小ロット対応」や「個別配送の再配達の発生」によりトラックの積載率が低下し、走行時間も延びていることが原因の一つとして考えられます。

災害発生時の物流網停止

大規模な地震や津波、異常気象による水害といった自然災害等の非常事態が生じた場合、物流会社は計画通りの輸送サービスが提供できなくなり、荷主企業は供給責任が果たせなくなることが、物流業界における大きなリスクとなります。
文部科学省地震調査研究推進本部によると、首都直下地震が30年以内に発生する確率は70%程度とされています。

物流業界の課題の解決方法

上記に挙げたような物流業界の各課題を解決するにはどのような対策が必要になるでしょうか。
各課題の解決方法について解説します。

人材不足を補うモーダルシフト

物流業界で最も深刻とされている人材不足。元々慢性的な人手不足が課題とされていましたが、働き方改革関連法の適用により発生する「2024年問題」によりひっ迫した状況となっています。

物流業界の人材不足を解決するには、輸送方法をフェリーなどによる海上輸送へと切り替えるモーダルシフトへの取り組みが有効とされています。
フェリー利用によるトレーラー輸送は海上部分が無人航送のため、陸送トラックに比べ大幅に人員を減らすことができます。さらに、ドライバーがトラックごとフェリーに乗船する場合は、その乗船時間は休息期間として取り扱いができる特例を適用することができます。月間拘束時間の上限を遵守した運行により、コンプライアンス対策にもなり、人件費・物流コストの大幅な削減を実現することができます。

国土交通省でも、道路交通渋滞問題の解決としてモーダルシフトを推奨しており、補助金の交付による支援も行われています(モーダルシフト等推進事業費補助金)。

人材不足を解決するための具体策について、以下でも紹介しています。

輸送コストを改善する共同配送

燃料価格や人件費などのコスト上昇に対し、大手物流事業者も運賃改定を発表しており、荷主企業に運賃の改定(値上)を行わざるを得ない状況です。

輸送コストの削減手段の一つとして、共同配送の導入が挙げられます。
共同配送とは、複数企業・事業所が連携を取り、同じトラックやトレーラーなどに荷物を積載し配送することを指します。さまざまな業界において「物流は共同で、競争は商品で」という考え方が採用され業界の垣根を超えた共同配送は推奨されています。

共同配送には、一か所の配送センターに集約してから行われる共同配送や、各企業・事業所にトラックが回り商品を集荷するミルクラン輸送方式があります。

共同配送のメリットは、独自の配送拠点の構築・運用と比較し、複数の企業で1台のトラック、トレーラー、コンテナを共同利用するため、積載効率を上げ、輸送コストの削減を図ることができる点です。また、より少ないトラック台数で輸送を行えるため、ドライバー不足や長時間労働の改善にもつながり、2024年問題対策としても有効な手段です。

国外輸送の場合、航空輸送はリードタイムを短縮できる一方、コストが最大のネックとなります。
航空輸送から海上フェリー輸送にシフトすることで、輸出入にかかる料金(運賃)を抑えることが可能となります。航空輸送と比較すると条件により同等のリードタイムを実現することも可能です。

海上輸送で環境問題改善

環境負荷の低減の実現が難しいとされる物流業界では、どのような具体策があるのでしょうか。

共同配送を実施することで、トラック輸送台数の削減、長距離フェリー活用による陸上走行距離の短縮となり、CO2の削減が図れます。1トンの貨物を1km運ぶ(1トンキロ)ときに排出されるCO2の量をみると、トラック(営業用貨物車)が216gであるのに対し船舶は43g(約1/5)しかありません。つまり海上にモーダルシフトすることで大幅なCO2排出量の削減が可能になります。
※温室効果ガスインベントリオフィス:「日本の温室効果ガス排出量データ」、国土交通省:「自動車輸送統計」、「内航船舶輸送統計」、「鉄道輸送統計」より、国土交通省環境政策課作成

更なるCO2削減の向けた取り組みとして、よりCO2排出量の少ない輸送手段への切り替え(モーダルシフト)も注目されています。トラック等の自動車で行われている貨物輸送を、環境負荷の小さい鉄道や船舶の利用へと転換することで、環境負荷を低減することができます。

CO2排出量削減可能な輸送手段として、海上輸送へのモーダルシフトが注目されています。
トラック輸送と比較して、どれくらい御社のCO2排出量が削減できるか確認してみましょう。

BCP対策で災害に備える

大規模な地震や津波、異常気象による水害といった自然災害等の非常事態が生じた場合、既存ルートが使えなくなる、連絡網が途絶えるといったリスクが考えられます。

従業員の安全確保と物流機能の担保、そしてなるべく短期間で通常通りの運用に戻し、事業を存続させるためにBCP対策を策定することが重要とされています。
しかしながらBCPの策定には、コストや労力などの負担を要するため、なかなか普及が進まない状況です。
天災による交通インフラの寸断や規制の影響を受ける物流業界においては、荷主と物流事業者で平常時から緊急事態に備え、BCP対策を準備しておく必要があります。

BCP対策の具体例の一つに海上輸送への切替が挙げられます。
災害時などに高速道路をはじめとした交通規制下においても、海上輸送で規制エリアを回避することで、計画通りの輸送が可能です。
過去では西日本豪雨や東北豪雨による陸路や線路寸断時に、海上輸送が活躍し、注目を集めました。
陸上輸送など既存ルートと併用して海上輸送を定期的に利用することで、緊急時のリスクに備えることができます。

その他のBCP対策案についてはこちらで紹介しています。

物流業界の課題に関するまとめ

今回は、物流業界の現状について解説した後、2024年問題をはじめとする物流業界の様々な課題や、各課題に対する取り組みについて紹介しました。物流業界の課題を解決するためには、現状をしっかりと把握し、具体的な対策を実行することが重要です。今後、さらなる需要増加が見込まれる業界ですので、業界の成長を止めないためにも、これらの課題に早急に対応することが重要となります。

関光汽船とは

海より速く、空より安く

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